詩と短編

親のこころ

風の強い夏の日
法事を終えた私と父は村の小道を歩いた
私の被ったパナマ帽は運悪く風にさらわれ
フクギの木の枝に掛かった
背丈半分ほどの石垣を登れば取れる高さだった
私が石垣に手を掛けると杖をついた父は
「危ないからあんたは待ってなさい」と言った
父さん、あなたは今年八十歳で
私はまだ還暦も迎えていないんだよ
そうしている内に風がまた吹き
帽子は近くのさとうきび畑に落ちた
良いも悪いも昔から変わらぬ情景
いつまでも変わらぬ親心
「親思う心にまさる親心けふのおとずれ何ときくらん」
吉田松陰の辞世の句を思い出しながら
しずかに父の手を引き私たちは家路を辿った


上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。